蓮の上の猫 VOL.20(web版順次掲載中)

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もくじ

表紙記事

吹く風に金木犀の香りがするようになり、ふとした日常に季節の変わりを感じて心が楽しくなります。(寒いのが苦手なので、この心地良さがずっと続いてと思ってしまうのですが、いずれ寒くなりますよね…。)

さて、いきなりの質問です。皆様は、変化する事は得意ですか?
僕自身は、冒頭で「楽しみ」と書きながら、実は得意では無いのです。常には出来ていませんが、「何かしらの変更の可能性があるかも」と思うようにして、変わる事に備えています。

今年は、世の中の価値観、生活スタイル、日常の出来事等がたくさん変わりました。それとは関係なく、自分自身の生活様式も変わり、色々な変化に⼾惑いつつも何とかついていっています。しかし、「変わる事って何だろう か?」、「変わらないといけないのかな?」等と天邪⻤な考え方や、以前のやり方に固執してしまう自分もいて、な かなか変われない時もあります。その中でも、「慣れた?大丈夫だよ」と言ってくれて、ペースを合わせてくれる存在は本当に有難いです。

紬の利用者さんの中にも、環境の急激な変化に対して、苦手な方が多いです。変わる事へのイメージがしにくか ったり、対応が苦手だったり、ついていけなかったりします。自分自身を頑張って変えてみても、新たな自分の不安から、元に戻られる事もあります。実際に変更がある場合、そういった利用者さんには、出来るだけ早い段階で その方のペースに合わせて、どう変わるか、状況等を分かりやすくお伝えしています。

とは言え、情報が多くても 不安になられるので、情報量にも気を付けています。もちろん情報だけでなく、「大丈夫だよ」と信じてくれる、言ってくれる家族、仲間、友達等が、本人の気持ちを否定せず寄り添ってくれることが大切だと思います。 今回、自分に様々な変化があり、協力者のお陰で何とか対応できましたが、改めて大変だなと感じました。

変わるスピードが人によって違い、すぐに対応できる人とそうでない人がいて、みんな様々だと思います。一方的な変化も多いですが、自分自身もゆっくりとでも変わろうとしている人にこれからも寄り添って行きたいです。

精神保健福祉士 兼田 悠生

久宝寺緑地お散歩レク

9月末に行った運営委員会で、メンバーさんから「何か気分転換ができるレクがしたい」と提案をしてくれました。このご時世で、どんなレクが出来るか、あれやこれやと言いながら、皆で話合い、考えましたが、結局決まらず、後日作業をしている時の会話で再度、レクの話になり、やっと決まった久しぶりのレクです。

10月13日、天気は良好、気候が落ち着いた感じの中で、紬から歩き組と自転車組に分かれて出発!雑談をしながら途中のコンビニで昼食を購入し、目的地に到着すると皆さんと協力しながら場所取りやシートをひいてまずはお食事です。
お食事が終わるとくつろいで過ごす方やバトミントンで楽しむ方、また四つ葉のクローバーを探したりと、それぞれの過ごし方で気分転換を楽しまれました。

近くの美味しい食べもん屋さん

僕(42才)が子供の頃からある大好きな喫茶店ライラック、八尾ファミリーロード北側にあります。今回はランチを食べに行ってきました!

お店の外からでも店内が見えるようになっており、中に入るとたくさんのフィギアがお出迎えしてくれます。席に座ると感じの良い店員さんから日替わりやオムライスなど教えてもらい、今回は日替わりを注文しました(ここはオムライスが美味しい評判のお店です!)

注文後はセルフでサラダバー・スープ・デザートを取りに行き席に戻ると、美味しそうに食べているお客さんやカップルで談話を楽しむ様子など、待っていると店内には様々なフィギアがところ狭しとあり、家族連れや子供さんも初めてくると驚く感じです。

私もこの店を初めて来た時は驚いた経験があるので、お料理を楽しむのもよし、店内をみながら雑談をするのもよし、ほっこり落ち着く喫茶店なので、休憩がてら一度行ってみてはいかがですか?

ある日のにゃんこさん

尚太郎の原因不明の引きこもりから、半年以上過ぎ、この間、4 畳間の休憩室のコタツの中にずっといて、夏の暑い日もです。夏場は、こたつ布団をかけたままでは流石に暑かろうと、薄手の生地をコタツにかけ、扇風機を回し、暑さ対策をしながらも、尚太郎はコタツの中が安心みたいでずっと“コタツムリ”をしていました。

利用者さんが帰られ夕方になると動き出せるんですが、1階の作業場に行くと尚太郎にしか見えない何かが出現する模様で、たまに怯えて、2階のこたつまで駆け上がる日もありました。

そんな尚太郎も、最近では、調子が良ければ昼間もコタツから出て、紬の中をウロチョロするようになり、とうとう朝のミーティングにもひょっこり現れて、利用者さんの足にスリスリし、机の上に乗って、少しだけ朝のミーティングに参加するようになりました。ちょっとずつですが、変化の兆しがあります。前みたいに常に作業場におれなくても、好きな場所でノンビリ過ごして欲しいです。

メンバーさんが教えてくれること

特定非営利活動法人ロータス
理事長 弘 瑛美子

今回は、ある一人のメンバーさんとの面談でご本人の素敵な気付きや、飾らない言葉をたくさん話され、私の価値観が変えられるほど、感動したことを、本人の了承を頂き、他の方にも伝えられたらと思っています。

その方は、40代の男性、知的障がい、発達障がい、精神障がいを持っておられます。8年前に就労支援をさせて頂き、ずっとその会社の技術者として働いてこられました。

去年の夏頃から、現場の人間関係で精神的な不調を訴えられるようになり、私も企業さんに出向き、診察へも同行し、改善を試みましたが、なかなか環境と、本人の症状が改善せず、今年2月に休職する事となりました。本人は、8年も続けて来られた大好きな仕事だっただけに、とても苦しんで、悔しい想いをされていましたが、これ以上の本人の症状からくる現場への影響と、本人の望む通りの環境整備は難しく、本意ではないものの、休職となりました。

いつ復職できるかわからない状況でしたが、その企業の担当の方が、上層部、現場のスタッフに本人が復帰できるよう働きかけて下さり、環境が整い、復職に向けての提案の連絡をこの10月に下さいました。
本人は、休んでいる間に、ハローワークへ通い、その業種に必要な技能講習を自ら受講し、資格取得もされていて、いつでも復帰できるよう整えておられました。

本人がどれ程喜ばれるだろうとその連絡をすると、とても沈んだ声で、友人が亡くなったと、立て続けに先日、連絡を取れない友人がいて、その友人も亡くなる夢を見たと落込んでおられ、涙声でした。私は、できるだけその気持ちに寄り添おうとしましたが、それは大変辛い事かもしれないけど、「このチャンスを逃すのか?家族に万一の事があっても、仕事、辞める?」と疑問が胸の中にありました。しかし、本人は「辛くて、今は、仕事の事を考えられない・・・」と。
電話を切り、私も理解しようと頭の中を整理しました。

そうか、本人が働ける環境が整ったと企業さんから連絡を頂いた。いつ整うか解らなかった訳だし、後は本人の体調が大切だし、慌てる必要はないかと思い直した。ただ、電話では、私も納得できない部分もあったので、「とにかく来て欲しい、会って話しがしたい」と伝える。利用者の少ない土曜日に、予約を取って来て下さり、ゆっくり話す事ができた。

以下本人の言葉を記す
友人が亡くなったのは夢だった。本当に亡くなったように辛く、涙が止まらなかった。4か月も連絡が取れず、ゲームの仲間の一人が暗号を解読し、連絡してみると、奇跡的に繋がり、本人の無事の確認が取れた。

(ゲームの仲間?友人?本当に仲間なの?友人なの?会った事もないの?)と理解に苦しんだ。

8年ほど前から、10人ほどの仲間で、年齢も30代~60代、同じ仲間でオンラインゲームをしている。
「ゲームをしている時が生きている実感を持てる。」と本人。

8月にゲーム仲間の一人が亡くなった。50代でガンだった。白血病で、余命宣告も受けておられたが、99%難しい、1%の可能性でも前向きに生きている人に出会い、死生観が変わった。命の大切さを考えるようになった。後戻りが出来ない、時間を戻す事も出来ない、今しかないと感じるようになった。1%の奇跡を信じておられたが亡くなった。

夢で亡くなって無事を確認できた仲間(以下Bさん)も糖尿病で、透析を週3回受けていて、制限された生活の中で、死にたい気持ちになると言われ、あまりそんな気持ちに関わりたくないと思いもあったが、8月に白血病で亡くなった仲間(以下Aさん)の話をBさんにした。亡くなると、こんなに悲しいんやでと知って欲しかった。

Bさんは、その仲間が亡くなった事は知らなかったので、ショックを受けていた。

Aさんは、ずっと元気だった。7月まで元気だった。8月に急に入院して、逝ってしまった。「ゲーム、自分だけ楽しいなら止めている。」

見栄っ張りで、見かけだけ、中身スカスカの人ようさんおる。安っぽい人間は多い。
自分の為、人の為に、一生懸命生きている人が、ゲームの中にいる。直接会っていない、直接は言えないけど、バーチャルだから言える本音がある、心が繋がる。

あの夢のおかげで、心配になりBさんに連絡する事が出来た。無事だった!生きとってくれてた!過去の嫌な事も全部ぶっ飛んでしまった!

亡くなったAさんには、お世話になった。助けてもらった。チャットしながら、仕事の相談も聞いてくれた。
励ましてくれた。その人の分も頑張らないと。

Bさんは、関東の人で、東と西に離れているけど、他の仲間からは、最強のお笑いコンビと言われる、と
本人は誇らしそうに話す。最高の仲間なんだと。

合わない部分は見て見ぬふり、詰めてももめるだけ。ケンカする事は、心がオープンになっているという事。頭に来るけど、離れられん。ほんまに離れてしもたら、いなくなって大切さに気付く。

薄っぺらい人に頭にきて、しんどなって、落込んで、あほらしい。目が覚めた。逆に心の整理が付いた。出会ってきた人に感謝、いろんな人の支えがあって、とりあえず、ここまできた。これまでの自分の経験も含めて、それを誇りに思える。
壁を乗り越えて、信頼関係が出来る。いくつも山を乗り越えて、そうやって深まっていく。ぶつかって、喧嘩になる時は、小休止、立ち止まって考えることも大事。

借り物ではない、その人の感情、体験から生まれる、嘘偽りの無い言葉が次々に溢れてくる。私は、一言一言に感動して、教えられ、必死に一言も取りこぼさない様メモを取る。学ばせて下さっている事に感謝の気持ちでいっぱいになり、こちらがカウンセリングをするつもりが、「ありがとう、今日はいろいろ教えて下さってありがとう。」と私も素直に言葉が溢れた。

知的障がい、発達障がい、精神障がいを持つその人は、まっすぐに正面から自分の試練を受け止めて、一度心が折れて、体も動かなくなってしまったけど、自分の経験を、出会いを、ここまで出来た自分を誇りに思うと話されていた。

悲しみも苦しみも乗り越えて、また、立ち上がり、社会に自分の好きな現場に戻る決意を、亡くなった人の分もと、気負い無く笑顔で言われる姿が本当に眩しく見えた。見栄っ張りで安っぽいのは自分だと思った。いつか私も、自分の体験を全て誇りと思える時が来るだろうか?本当に結局は、メンバーさんに育てられているばかりである。


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